べッセル・ヴァン・デア・コーク『身体はトラウマを記録する――脳・心・体のつながりと回復のための手法』

トラウマ関連で最初に読んだのがべッセル・ヴァン・デア・コーク『身体はトラウマを記録する――脳・心・体のつながりと回復のための手法』。おそらく現在手に取りやすい一般向けの概説書では最もメジャーだと思われる。著者のヴァンデアコークはハーマンの『心的外傷と回復』の序文にも名前が載っているトラウマ研究の大家。
分厚いけど読みやすい良書だった。筆致も当事者を励ますような目配せが見て取れて精神が不安定なときでもわりと落ち着いて読めた。

特徴はタイトル通りトラウマを身体症状として理解する立場で、特に薬物治療・DSMや認知行動療法に懐疑的な傾向が一貫して取られている。
内容は大きくトラウマの身体メカニズム・トラウマの研究史/時代ごとの社会的な受容・幼少期におけるトラウマ(発達性トラウマ)・そして治療法に分かれる。ページ数としては最後のあらゆる治療法にボリュームが取られているけど、どちらかというと前半のトラウマについての研究のほうが面白く読めた。治療方法もかなり興味深いものが沢山ある(特にEMDRやIFS家族療法)けど、薬物や認知行動療法に対するバイアスがやや強めに感じるのと現実的に患者が受けるのは厳しいだろうというのが多い。
ただとにかく網羅的に書かれているのでトラウマ/PTSDに対する精神医学的なトピックは超広範囲をカバーできる。実際この本を読んでから色々と個々のトピックを調べながら本を探した。そういう役割を果たしてくれる本。

一番興味を惹かれたのはやはりトラウマの身体的メカニズムの部分。いまどき趣味で哲学やっていればこのあたりの分野は無意識でも入ってくる。
身体器官としては何より脳、そして自律神経などの身体のメカニズムも言及される。神経科学は1990年代初頭に全身スキャナーが発明されたことで大きく進歩したんだとか。
前頭葉・扁桃体・交感神経/副交感神経などの重要な器官の仕組み、また闘争/逃走反応といった用語は他の本でも何度も見た。このあたりの内容はもう1冊の良書だったストレスに負けない生活―心・身体・脳のセルフケア (ちくま新書)とも共通するところが多い。

この中で紹介されているポリヴェーガル理論というのにいろんな意味で特に興味を惹かれた。たぶん次に書く。

今日の調子はとても良い。