カテゴリー: 読書

加藤周一の『日本文学史序説』

9月から今月にかけては何年かに一度の本の虫干しをしていた。
どかどか大量抹殺していると買ったことを忘れた本も出てくるもんであって、その中の1つがこれ。
ちくま学芸文庫にずっと昔から入っていて漠然とすごい本なんだろうなとは思ってたけど実際読み始めると笑っちゃうくらい凄い。... 続きを読む


令和はトラウマの時代になる

眞子さまが複雑性PTSDを公表された。
ただ実質的には一般的に「適応障害」と診断される症例に近いんだと思う。「複雑性PTSD」はまだDSMに載っていない。まあいずれにしてもトラウマ(心的外傷)が問題なのは間違いないし、この1件でアダルトチルドレンや発達障害みたいに注目されることになるのかもしれない。どこかで「平成は発達障害の時代だったが、令和はトラウマの時代になるのではないか」という文章を見たのを思い出す。... 続きを読む


国書刊行会からスタニスワフ・レム・コレクションの第Ⅱ期が出るらしい

[blogcard url="https://www.kokusho.co.jp/special/2021/08/post-17.html"]

レムは哲学的な素養や文学の知識が別格なところがあって、池澤夏樹さんのような文系SFファンに人気が高い。
ご多分に漏れず僕もSFジャンルで好きな作家はヴォネガットかレムくらいしかいない。大学生の頃イーガンとかも読んだけどSF小説ってどれも科学的な考証は多分すごいんだろうなとは思えどストーリーテリングがどれも凡庸にしか思えなくてピンと来なかった。... 続きを読む


Don Ihde 『Listening and Voice: Phenomenologies of Sound』

ガルラジの長文を手直しして前逃げたところをきっちり納得いくまで書き直したい(あと本にしたい)という野望があるんだけどこれ以上は何かしら新しい知識がないと進みそうにない。
ドゥルーズをまた読み始めたのもその流れなんだけどドゥルーズのベルクソン経由したシネマの理論はやっぱり微妙に空振る感じがある。
音や声や音楽を現象学の観点から分析してるような研究がほしいんだけど、と思ってちょろっと検索したら簡単に出てきた。ただし未邦訳。... 続きを読む


吉沢譲治『血のジレンマ サンデーサイレンスの憂鬱』

サンデーサイレンスの名前を初めて知ったのは2016年。新千歳空港のすぐそばにある社台グループのテーマパーク・ノーザンホースパークに寄ったときだった。
オフシーズンで人通りの少ない園内をふらふら歩き回り、端にあった小さなミュージアムに入った。中では社台グループが生産した数々の名馬が紹介されていた。
その中でステイゴールドやディープインパクトといったどこかしらで聞いた覚えのある名馬と並び、大きく紹介されていた知らない馬の名前が妙に印象に残っていた。サンデーサイレンス。... 続きを読む


蓑虫屋

古書蒐集といえばマニア趣味の原点みたいなもんだし、日本は古書市場が豊かなので様々な専門ジャンルの古本屋がある。競馬もあった。店名は蓑虫屋(みのむしや)。 https://minomushiya.com/ 90年代競馬ブームの頃からハイセイコーの時代、戦前のものや海外の本、いったい誰が作り誰が使うのかもわからない超分厚く超高価な年鑑や資料集まである。たぶん古書市場で日本中から競馬関係の本がこの店に集まっているんだろう。 値付けは全体的に高く、特に競馬というジャンル自体古き良きマニアが多そうなのでレコード収集に近い世界の匂いがする。 当然ウマ娘も認知しているよう。

永遠の時間

ツイッターの「アナリティクス」というメニューを間違ってクリックして開いた。 内容は各時期ごとのツイートごとの数値や月間で最もインプレッションを集めたツイートなどが自動的に記録されていて面白かった。 ずっと遡っているうちに、去年の7月に「アイコンのキャラクターが昔読んでからタイトルを思い出せないキャラクターに似ている、できれば教えてほしい」というリプライが来ていて、冷や汗かきながら返信した(普段はフォロー外リプライ通知切ってる)。届いてればいいけどあんまりアクティブにツイッター使ってる方じゃなさそうなので厳しいかな……。 鶴見俊輔の講演録が収められた『神話的時間』という本がある。谷川俊太郎や『100万回生きたねこ』の佐野洋子との対談も一緒に収録されている。 植芝理一はこの中に収められている「永遠の時間」という概念にインスパイアされて、ディスコミュニケーション内宇宙編の『永遠の時間』というエピソードを書いた。ディスコミの中でも特に好きなエピソードで、言うまでもこの本を買ったのは植芝さんの影響だった。 植芝さんが僕の人生を決定づけた人だった。植芝さんから宗教や心理学や民俗学のような世界を教わった。自分で本を読むようになってからは読んだ本がディスコミの参考資料に載っていたことに気付いて(たしか西郷信綱の『古代人と夢』)、やっと植芝さんに追いつけたような気がした。 しかしそれも束の間ですぐまたわからなくなる。古典にアクセスするための踏み台で終わる著者も多いんだけど、植芝さんはいまだにずっと例外のままでいる。いつまで経っても読み解けない。 やっと追いつけたと思ったらずっと先にいる。どれだけ生きても追いつけそうもない。永遠の謎みたいな人。戸川や卜部みたいだ。... 続きを読む


江面弘也『名馬を読む』

JRAが公式に認定している顕彰馬32頭を順に紹介されている。 何かひとつのジャンルにについての体系的な知識をつけようと思ったら全体と細部を行ったり来たりするのが常道だけど、全体の見取りに関してはやっぱりまだネットより本に信頼を置いてるので手に取ってみた。 特に競馬は世代を越えて受け継がれる血統や世代ごとのライバル関係、生産牧場やオーナーなどで関係性が生まれるのでざっと歴史的に概観できるこういう本がとても助かる。 個人的にいちばん良かったのは時代ごとの競馬シーンの雰囲気やそれぞれのスターホースを取り巻く社会的な状況についての説明。一口に名馬と言っても戦後のトキノミノル、70年代のハイセイコー、90年代のオグリキャップとそれぞれに世間的な人気の出方は違っている。ハイセイコーは「競馬の中にハイセイコーブームがあったのではなくハイセイコーブームの中に競馬があった」とまで言われたり、ぬいぐるみが象徴しているように競馬が女性ファンや一般層にまで裾野が広がったのがオグリキャップを嚆矢とした90年代競馬ブームだったとか。だからナリタブライアンとかは自分でもなんとなく名前知ってたんだとか自分の中のバラバラの知識が繋がっていく感覚がある。 筆致も明確で、それぞれの馬のキャラクターが簡潔に説明されてる。まあたしかに擬人化向けだわとは思う。他の擬人化ジャンルにも言えることだけど、馬自体のキャラクター化っていうよりむしろ馬に加えて生産牧場やオーナーの意向、調教師、騎手、そして馬の辿った物語をすべてまとめて1人に流し込んでるっていうほうが近いんだよね。 2巻はこれら公式のJRA顕彰馬から漏れた名馬が取り扱われているとのこと。これから読む。 あと1人だけグッドエンド失敗してたゴルシリベンジした。勝負服も取った。 ... 続きを読む


『経験論と主体性』2章

YUKIの新譜が出た。一昨年行ったライブがものすごく感動的だったので楽しみにしてた。 『経験論と主体性』2章は。ドゥルーズによるヒュームの社会思想論。わりに読みやすい。 ヒュームは社会契約説の闘争状態に反対し、人間はその本性(=自然)に「共感」の能力が備わっており、それが社会の基礎になるとする。しかし共感はそれだけでは個々の好み、快/不快にとどまり、さらに一般性を獲得することはない。そこで人為的な社会制度が要求される。これは、ヒューム哲学における情念/知性の二元論にそれぞれ対応している。 そして、その社会制度がヒューム流の「制度」となる。法が否定性の原理なのに対して、制度は肯定性の原理。人間が自然的な欲望(情念)を成就させるために存在するのが制度(知性)である。反ヘーゲルのドゥルーズらしい論考。というかこの段階でもうアンチ・オイディプスに通じる構想はあったんだね。 個人的に興味を惹かれるのはドゥルーズがふつう「反省」と訳されるリフレクションという語に「反射・拡張・矯正」といった多義的な意味合いを与えていること。これはこのあいだまで読んでいた心理学でも「リフレクション(内省)」として発達・臨床心理で重視されている概念として紹介されていた。... 続きを読む


ヒューム入門

だいぶ頭の情報処理能力が回復してきた感じがするので『経験論と主体性』を再開。1章まで。 途中でヒュームのテキストも見とかないと無理だとなり中公の縮約版の『人間本性論』にもざざっと目を通す。 思ってた以上にニーチェのような哲学史の傍流に位置づけられる思想家の手触りに近い。ドゥルーズの色眼鏡抜きでもかなり感じる。 経験論と合理論の対立は教科書的な哲学史だとカント哲学の前フリ的に消化されてしまうけど、実際テキストを開いてみるとかなり理性や合理的な思想に対する冷ややかな目線を持っている人柄が伝わってくる。特に情念(感情/情動)や人の嗜好・好みを原理として強く主張していているのも意識が引かれる。
私の指のかすり傷よりも世界全体の破壊を好んだとしても、理性に反することにはならない。
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