シャニマス毎年恒例の新キャラ追加。
ショートフェチなのでルックスが公開されたときから気になっていた子で、性格も快活でかわいい主人公タイプを想像していたけれど、蓋を開ければやはりシャニマスらしくというか、一筋縄ではいかない、アイドル育成ゲームのフレームを大きく超える重いストーリーになっていた。
この傾向は前から強まっていたものの、にちかはさらに突出して強い。事前情報ではアイドルへのアンチテーゼとしてデザインされていたノクチルからやや揺り戻しの傾向をイメージしていたけど、むしろ一層攻めた姿勢になっていると言っていいだろう。
何よりまず書いておきたいのはストーリーの作り。WING編のストーリーはキャラゲーのフレームを完全に踏み越えていて、大きな物語の中の一部となっている。
浅倉透のストーリーもその類ではあったものの、透はまだキャラクター1人にフォーカスしたものだったのでキャラゲーの延長線と言えなくもなかった。今回はそこからさらに一段階踏み越えている。WING優勝後に姉や社長など複数のキャラクターが関連する伏線が張られ、にちか自身の物語もアンチ・カタルシスによって幕が引かれる。
また、今回はプロデューサーがさらに強く1人のキャラクターとして個性を持っていて、にちかの頑なさに対立する形の思想や主張を内に秘めているのが描写される。たぶんこれもここまでで一番強いんじゃなかろうか。僕はシャニのP描写に関しては特にあんまり思うことなかったけど、今回はなんとなく一人称視点のノベルゲー形式が縛りになってきているように感じたりした。
ストーリーの主題はおおむね「自分らしさ」と言っていいだろう。二次元アイドルに長く受け継がれているテーマである。「伝説のアイドルに縛られるのではなく自分らしさを見つける」という意味ではアイドリープライドに近いと言えなくもない。まさかのアイプラ。それとこのテキスト全部書き終わったあと敗退コミュを読んだ。なるほどと思った。
キャラクター的には最も関心を惹かれるのが繰り返し強調される自己肯定感の低さや自己の空虚さで、はっきり言っちゃえば最近の自分の心理面と非常にダブるところがある。そこまで直接的じゃなくてもああ、この居心地の悪い感じは身に覚えがあるな……と頭を締められるような感覚に襲われる部分が多々ある。
そしてそれを克服するために夢や目標がある(と個人的には読んでる)という、夢によって縛られている側の人間の物語である。そして解放の契機となるはずだったWING優勝も、幻想が幻滅に変わるような形で幕を閉じる。徹底してリアリズムで描かれた非常に重いストーリー。このアイドルの裏側のドロドロした現実にポイントを置けばセブンスシスターズが連想される。
この一周回って〈偶像〉としてのアイドルに切り込むようなスタンスは挑戦的だと思うのでシンプルに続きが楽しみ。ただシャニマスに対して億劫になってしまった理由でもあるんだけど、ここまで重要になるとなかなかたまに気軽に触るようにはいかなくなる。
先の展開として個人的に考えられるのはナナシスや虹ヶ咲のような自己自身を承認し、アイデンティティを確立するようなルートくらいだけど、ここまで広げるならもっと先を見てみたい。にちかは今のところ他の周囲の助けによって解放されるような気配もない。ユニットであるSHHisの相方である緋田美琴も関わってくるのかもしれない。
ここまで書いたところで公式ページを見てみると、SHHisのキャッチフレーズは「わたし(she)がわたし(she)になるための、1000カラットの物語を」。