マンハッタンカフェ

マンハッタンカフェはなんとしても欲しかった。

というのも史実馬で一番興味を持ってるサンデーサイレンスを絡ませていたから。

ウマ娘版マンハッタンカフェのキャラ付けは霊感少女。普通の人には見えない「お友だち」がいて、その子に追いつくために走り続けている。
そして作中ではそのお友だちのモデルがサンデーサイレンスであることが仄めかされている。

現役時代のSSはアジリティに優れコーナーの走行が得意だったらしい。

またマンハッタンカフェの世代は他にアグネスタキオン・クロフネ・ジャングルポケットなど他にもスターホースが揃った群雄割拠の時代で、さらに上の世代のテイエムオペラオーを倒したことで(各距離のスペシャリスト揃えてやっと倒せるのがオペラオーという見解もある)新世紀の最強世代とも呼ばれる。

代わりにどの馬もクラシックがピークの短命で活躍期間は短い。
ウマ娘はコンテンツ展開で最初の長編ストーリーともいえるアニメ1期でシナリオサイレンススズカを取り上げたように、史実をなぞりながらifストーリーを山場にするのが得意なのでそのあたりも注目してた。

クロフネその他はいないので(なんかデジタルのシナリオで「名前を読んではいけないあのウマ」みたいに出てくるらしくて笑った)、相方は自動的にアグネスタキオン。

史実のアグネスタキオンは皐月賞で引退しているのでタキオン本人のシナリオはほぼオリジナルストーリーみたいなもんだったけど、カフェ版シナリオは史実通りに皐月賞で引退したタキオンがマンハッタンカフェのサポートに回る。

アグネスタキオンは「ウマ娘」という出オチみたいな概念に対して「ウマ娘とは何か」というメタ的な視点を持っているキャラだけどそのあたりが存分に使われている。
史実カフェの故障リスクが霊能力による呪いとして導入されており、自身も故障リスクを抱えているタキオンがそのサポートに回り、自分の代わりにカフェを勝たせることで「ウマ娘という存在の限界を見る」を達成しようとする。
というかたしかにカフェが主役ではあるけどタキオンの思惑や身体の不安は明かされないので、実質的にタキオンシナリオの別ルートのような趣きもある。

シナリオ序盤は史実通り体質の弱さを克服したカフェがクラシック秋から頭角を現し、さらに「お友だち」へもどんどん近づいていく。
ゲストとしてスペシャルウィーク、サイレンススズカ、ゼンノロブロイといったカフェとタイプの違うサンデーサイレンス産駒のウマ娘が登場し、それぞれとレースを走ることでパズルのピースが埋まるようにカフェの中の「お友だち」が立体的になっていく。

そして物語の転換点となるifストーリーの入り口が、凱旋門賞への挑戦。史実ではこの無理がたたり引退することになる。

後で知ったけどサンデーサイレンスが亡くなったのはこの凱旋門賞挑戦の直前だったらしい。マンハッタンカフェは社台グループの吉田照哉が共同オーナーの1人で、凱旋門賞を強く推したのも吉田だったそうなので、サンデーサイレンスと瓜二つの姿だったマンハッタンカフェに何か懸けている想いがあったのかもしれない。

これも史実の陣営の言葉らしいね。
ここで今まで通り自分の行く先を決めてきた「お友だち」を追って海外へ行こうとするカフェをタキオンとトレーナーが引き止める、という構図になる。

代わりに挑戦するのは宝塚記念。

ここで幻覚のようなゾーンに入ったカフェを見たタキオンが闘争心を思い出し、決別を切り出す。

クライマックスは古馬有馬記念で現役復帰したアグネスタキオンとの決戦。

凄い密度のシナリオだった。ウマ娘のifストーリー路線の集大成と言っていいんじゃないか。

そしてエンディングではいつのまにか周りに慕われるようになったマンハッタンカフェが描かれる。

サブタイトルは静かなる継承者。おそらく父サンデーサイレンスの他界後、アグネスタキオンと共にリーディングサイアーを取ったのが元ネタだろう。
種牡馬マンハッタンカフェはSS後継種牡馬の中でも特にサンデーサイレンスの「母系の能力を引き出しそれぞれ得意な距離や馬場が違う多彩な産駒を出す」という性格を受け継いでいたらしい。

圧倒的に重厚なシナリオだった。孤独な少女のビルディングスロマンでもある。物語を読むってこういうもの。