EMDRについて

2021年4月21日

今日は夢で古城?のような場所を歩いていて、部屋1つ1つごとに安全を確認して最後に城が安心を得て最後に窓から外を見て目が覚めるというあまりにも今の心のメタファーすぎる内容で起きてちょっと笑った。

天気がいいので買い物ついでに少し遠くのパン屋に行きたかったけど定休日だった。代わりにアイス食べた。こういう日だと頭からもやもやが抜けていく気がする。久しぶりに動悸が止まってるけどまだかかるだろう。

EMDRの話。トラウマ治療は薬が効きにくく、治療は心理療法が基本になっているそう。基本は持続エクスポージャー療法(暴露療法)で、これは簡単にいえば患者に体験を何度も思い出させて身体に慣れさせることで記憶を処理する方法とのこと。ただこれは患者に負担がかかるため、様々な他の治療法が模索されている。

ヴァン・デア・コーク『身体はトラウマを記録する』では数々の新しい治療法が紹介されていて、特にヨガのような東洋医学に基づくような代替医療を積極的に提案している。
この考えを引き継いだより実践的で現場に近い本で杉山登志郎編『発達性トラウマ障害のすべて (こころの科学増刊)』というのがあり、これが非常に面白かった。
フラッシュバックを抑える漢方の処方(神田橋処方)や、鍼灸のツボを指でトントンと叩くタッピングのような疑似科学そのものの方法も現場感覚だと効果が無視できないため取り入れているとされていて、治療にあたっている人はなりふり構っていられないというのが伝わってくる。
他に催眠療法に分類される自我状態療法やホログラフィートーク、神経系の理論に基づいたソマティック・エクスペリエンシング、東洋医学のツボの流れを引くTFTやEFT、この前に来た弁証法的行動療法のような新しい認知行動療法など常識を覆されるような治療法の数々が真剣に紹介されている。はっきり言って普通の医療ならこの大半が代替医療として斥けられると思う。たださすがに令和の時代に出版されているだけあってどれも根拠の強弱はあれど治療エビデンスはいちおう付記されている。

その中でも最も衝撃的だったのがEMDRだった。
これはセラピストが指を左右に振り、患者が目でそれを追うことによる左右の眼球運動でなぜかPTSDを引き起こす記憶が処理され、無害化されるというにわかには信じがたい方法。
しかし実証研究も論文も大量に出ていて、WHOすら治療ガイドラインに推奨している。本当に衝撃的な方法。
現在の有力な説によると人間はレム睡眠(夢を見るときの睡眠)のとき眼が高速で動いていて、これによって記憶の処理がされる。EMDRはこのプロセスと同じことが起こっているのではないかとも言われているらしい。ただ実際はまったく不明。とにかく効くことだけはわかっている。また形は違えどエクスポージャーの一種とみる見解もある。

EMDR – Wikipedia

開発に至るまでのエピソードも開発者のフランシーン・シャピロがある日公園で憂鬱な考えに取り憑かれていたとき目を高速で動かすと一瞬で悩みから解放されたことに気付いたというこれもまた衝撃的。
EMDRはその方法上PTSDを引き起こす記憶への直接のアクセスが伴うため素人の見様見真似は厳禁。厳格なライセンス制になっている。日本ではまだあまり普及していないとのこと。当然保険も効かない。上の『発達性トラウマ障害のすべて』では日本の精神科医が忙しすぎてなかなかライセンスを取りにいけない業界の難点も指摘されている。

また、これは研究が進むにつれて眼球運動だけでなく身体のどこでも両側刺激(左右交互)でも同様の効果が出るらしいことがわかり、そこから前に書いたバタフライハグが生まれた。上記書には杉山先生や他精神科医によるタッピングを組み合わせた様々な簡易バージョンが紹介されている。個人的にはやってみても効果あったかはよくわからなかったけど、とにかくトラウマ治療というところは異常な奥深さがある世界だというのは伝わってきた。