大学生の頃病気のようにムーンライダーズを聴いていた

2021年11月29日

12月のサニーデイのライブの前日にムーンライダーズのライブもあることを知り、そっちもチケットを取った。何事もなく行けるといいな……。

ムーンライダーズは大学生の頃によく聴いていた。なんであんなに聴いてたんだろう。
ただなんとなくそんなネットを探せば若い人で聴いている人もいたし、数年後にスカートなど当時活躍していたインディーミュージシャンによるトリビュートアルバムも出た。相対性理論の永井聖一なんかもリスペクトを表明していた。あまり表に出なかったけど地味に再評価の時期だったんじゃなかろうか。その後事実上の解散に近い活動休止に入り、かしぶちさんも逝去されてしまったけど。

ロキノンはともかく「ミューマガ系」みたいな括りがどれだけ一般的なものかはわからないけど、音楽好きだけど洋楽には行かなかったようなタイプの人間が辿り着くような場所にいたのがムーンライダーズだったような気がする。
なんというか、音楽マニアの人が堂々とマニアックな音楽をやっているバンド。

ムーンライダーズというバンドは独特のとっつきにくさがあり、まずキャリアが非常に長い(10年前の時点で結成30年、オリジナルアルバムは20枚)という時点で難しいんだけど、そこからさらに音楽性の変化が目まぐるしく、「満場一致の代表作」みたいな作品は、たぶんない。
パブリックイメージとしてはMOTHERの作曲をした鈴木慶一のバンド、というのが一番だろうけど、このバンドは全員がソングライターでボーカルもよく交代するのでそれもあまり実像とは近くない。
そして、ニューウェーブの先駆けとして日本ロック通史におけるマイルストーンとして評価が高い70年代の作品(火の玉ボーイ~カメラ=万年筆)は、正直言って今聴くにはかなり音が古い。名盤ガイドなんかを頼りにこの辺を最初に聴くとすぐ離れる可能性が高い。

とは言ってもソングライティングはこの頃から一級品で、代表曲のヴィデオ・ボーイなんかは後年もよく演奏されていたけど、このバージョンだと古臭さが払拭されて本来の歪んだポップネスがよく出てきている。慶一さんの歌だけはどうしようもない。

そういう長らく「最初に勧める1枚」みたいなのが非常に難しいバンドだったんだけど、サブスク時代に入って意外な恩恵が出ていることに気がついた。それが最初に貼ったSpotifyのアーティストページのトップトラック。

月夜のドライブとか入ってるのが謎だけどこれは完璧に近い。後で変わるかもしれないのでスクショ撮った。文章でも残しとくと2021/11/28のトップ10は1. 9月の海はクラゲの海、2. ダイナマイトとクールガイ、3. 月夜のドライブ 4. 彼女について知っている二、三の事柄、5. 涙は悲しさだけで、出来てるんじゃない、6. Cool Dynamo,Right on、 7. スイマー、8. ボクハナク 9. 幸せの洪水の前で 10. DON’T TRUST ANIONE OVER 30。

マニア・マニエラとかがサブスクから抜けてるので微妙にAORなんかにアルバムが偏ってる感じがするけどほぼこれでいいんじゃないか。
個人的にはこの中からならとりあえず9月の海はクラゲの海かCool Dynamo,Right onの2曲聴いてどっちもピンと来なかったらもうそれでいいよという感じがある。

アルバムで選べば……いやこうして見ると歯抜けが痛い。黄金期(だと思ってる)80年代ではアマチュアアカデミーと青空百景とマニア・マニエラという重要作がない。個人的に最も愛聴している90年代作品では月面讃歌やBizarre Music For Youやムーンライダーズの夜がない。2000年代のDire Moron TRIBUNEとP.W Babies Paperbackがないのも点睛を欠いている感がある。

ただ逆に今解禁されているものでも入門には(今からどうやったら新規リスナーになるのかわからんが……)かなりいい感じになっている。少なくとも80年代のドントラとアニマルインデックスは最初の1枚として勧められることも多い傑作なので非常に都合がよい。

90年代はAORと最後の晩餐というのがやはり微妙にパンチ力に欠けるけどまあ悪くはない、この時期はこういう音だったというのはわかる。
ちなみに僕が初めて手に取ったライダーズのCDは月面讃歌で、出だしのSweet Bitter Candyで一発でやられた。

2000年代はMOON OVER the ROSEBUD、Tokyo 7、Ciao!という3枚があるけどこれはかなりよい。特にMOON OVER the ROSEBUDは80年代の2枚と並んで最初の1枚にも勧められる。
Tokyo 7はライダーズにしてはかなり素直でストレートなサウンドで聴きやすい。Ciao!は活動休止にあたりリリースされたアルバムで、圧倒的に「これでおしまい」のメッセージが込められている。当時はああもうみんな年齢的にも無理だろうし事実上の解散か、しょうがないよね、と思ってたもんだけど今こうして本格的な活動再開に向かってるんだからわからないものですね。
逆に解禁されていないDire Moron TRIBUNEとP.W Babies Paperbackはちょっといろんな難しさがある。

ツイートの延長くらいの気持ちでだらだら書いてたら長くなったな。でも満足した。

最近になって活動再開後のセットリスト見たらめちゃくちゃサービス良くて悔しかったのでクリスマスライブも期待しています。