国書刊行会からスタニスワフ・レム・コレクションの第Ⅱ期が出るらしい

2021年9月25日

レムは哲学的な素養や文学の知識が別格なところがあって、池澤夏樹さんのような文系SFファンに人気が高い。
ご多分に漏れず僕もSFジャンルで好きな作家はヴォネガットかレムくらいしかいない。大学生の頃イーガンとかも読んだけどSF小説ってどれも科学的な考証は多分すごいんだろうなとは思えどストーリーテリングがどれも凡庸にしか思えなくてピンと来なかった。

今回のはざっと見た感じだとハヤカワで既に翻訳済みの作品の新訳が多めかな。『浴槽で発見された手記』はたしかサンリオ文庫で狂ったプレ値になってたはずなのでこれが一番需要ありそうか。
『インヴィンシブル』(『砂漠の惑星』新訳)、『捜査』(旧訳同タイトル)、『電脳の歌』(『宇宙創世記ロボットの旅』新訳)、あたりはそこそこ手に入りやすいしレムファンなら既読の人も多いと思われる。
となると残りは

  1. 『火星からの来訪者──知られざるレム初期作品集』
  2. 『マゼラン雲』(「旧共産圏以外では初めての翻訳となる、若きレムが描く壮大な冒険の物語。映画『イカリエ-XB1』原作。【本邦初訳】」とのこと)
  3. 『地球の平和』(「〈泰平ヨン〉シリーズの最後の作品であり、レムの最後から二番目の小説。【本邦初訳】」)
  4. 〈別巻〉『レムかく語りき』(「生い立ちから創作過程、文学観、政治情勢から文明論、人類の未来など、あらゆるテーマについて縦横無尽に語るレム。文芸批評家のスタニスワフ・ベレシ(ヴロツワフ大学教授)が聞き手となって行った連続インタヴューをまとめた、レムの創作過程と思想を知るために決定的に重要な一冊。【本邦初訳】」)

この4冊が目玉になるか。
ただ正直もうレムで未邦訳の作品はそんなに出来のいいのは残ってないと思われるので(レムの若い頃の作品は結構リアルに若書き感が強い)、レムフリーク向けのラインナップという印象が強い。『地球の平和』は泰平ヨンシリーズかつ、世界文学史上最高レベルの傑作『大失敗』から1つ前の作品ということでこれは期待できるかもしれない。

とは言ってもこのシリーズの立役者と思われる沼野充義先生は「SFジャンル作家から世界文学としてのレム」というイメージを持っていると思うのでとにかくこれが揃う意義は強いとは思う。

個人的には本当に読みたいのはここでちらっと紹介されている『SFと未来学』っていう冗談みたいな大著(らしい)なんだけどさすがにこれは俺が生きてるうちに翻訳されることはなさそう。