久しぶりの山下達郎。
聴き始めたのは2013~2014年頃、一番ちゃんと音楽聴いてた頃でアニソンに足を突っ込み始める直前だった。
最近は猫も杓子もシティポップになったけど当時はまだ「見つかる」前で、ライブに行っても一緒に年を取ってきたという雰囲気の中高齢層しかいなかった。僕も当時もう30手前だったけどそれでも会場で浮くくらいだった。
今思うとあれはたしかに再評価前夜で、Twitterの周りのフォロワーの影響で80年代以前の強くファンクに寄った激しくて若々しい山下達郎に夢中になった。繰り返すけど当時はまだ山下達郎といえば世間的にはクリスマスイブとRIDE ON TIMEの人だった。
そんな流れで最初に行ったのが2014年のManiac Tourと題されたライブ。今思うとまだ履修しきれてなかったのにこのタイトルでよく行ったよなと思うけどこれが本当に凄かった。今まで行ったすべてのライブの中でベストを挙げろと言われたらこれはいまだにすぐ思いつく。
内容は山下達郎のパブリックイメージを裏切る70~80年代のファンクナンバーで埋め尽くされたセットリスト。それも行ったのは初日公演で客のテンションも凄まじかった。
その後翌年にもう1回ツアー見てからはしばらく鬼のような倍率に嫌われ行けてなかった。でもまあこの超レアセトリ聴けてるからな……という。山下達郎に限らずメジャーアーティストはライトファンへの配慮でどうしても有名曲が毎回固定されてるのでセトリがややマンネリになる。
あとはシアターライブという映画館限定で流されたライブ映像もあってこれも良かった。
さて、そんなこんなで時は流れておよそ7年。どうせ今年も当たらないんだろうなと思いながら申し込んだら、急に当たった。何か巡り合せか。しかもこんな時に限って直前になんかTwitterで燃やされてるし。
言ってもまあアルバム出したんだしSPARKLEとクリスマスイブとRIDE ON TIMEとLET’S DANCE BABY固定であいだに新譜の曲挟むセトリでしょ。まあ山下達郎のライブはもうレベル違うんだから何やっても行って良かったって思うんだけど……。
会場は千歳の市民ホール。キャパは1200程度でホールとしてはかなりこじんまりしてる。最後方だったけどかなりステージ見えた。音響は言わずもがな。
今回のステージセットは驚くくらい今流行ってるニューレトロやネオレトロのデザインそのまま。ネオンを貴重とした独特な色合いの配色と高層ビルのシルエットで描かれた都会の景色。山下達郎でも案外こういうの好きなんだな。ずとまよのセットって言われてもおかしくない。
で、いざライブが始まると、しっかしまあ~相変わらず凄い。声は信じられないくらい張ってるし、演奏も最近は超上手い若手のバンドも増えたのに比べ物にならない。圧倒的すぎる。
正直なところ前に見たときで62くらい?のはずで、今回いよいよ70歳の大台ということでさすがにちょっと衰え感じちゃうかな……とか思ってたんだけどなめてました。化け物だった。本当に何ら衰えてない。ちょっと信じられなかった。
ライブはお決まりのSPARKLEでスタートして、2曲目に演奏されたのが、雨の女王。大昔のライブ盤にしか収録されていないかなり珍しい曲。
意外なところ来るな~と思ったらMCで話されたのが今回のツアーはアナログの復刻に合わせて20代の頃に作った曲が中心というお話。え、マジで。そして本人からもシティポップブームへの言及や最近は若いリスナーが増えたという話が何度も(本当に何度も)あった。
たしかに言われてみればなんか客層が若返った気はしてた。上にも書いたようにちょっと前はアラサーですら浮くくらいだったのに。個人的な感覚だと毎年ライジングサンに通ってる的雰囲気の音楽マニア然とした男が多かった。ライブ途中の「初めてライブに来た人」の挙手にも結構な割合(下手したら1/3くらいいたんじゃないかな?)が手を挙げてた。
そして演奏されたのが土曜日の恋人にSOLID SLIDER。えーまじで、こんなのやってくれんの。もう一気に気持ち入っちゃったよ。
演奏の方も心なしかソロ回しやビートが目立つジャズやファンクっぽいアレンジになっていた。1曲1曲がかなり長めに引き伸ばされていた気がする。
それに続く中盤パートでは定番レパートリーのクリスマスイブや蒼氓に加えて「ずっと一緒さ」とかやってくれたのが嬉しかった。
そして何よりのハイライトが後半のパート。
「最近の若い人はファンクを気に入っていて~」という本人からの言及があり(昔は一部の好事家が持て囃してるだけでアーティスト本人にとっては過去の仕事だからもう顧みられることないんだろうなと思ってた)、今回はそれに応えてみたいな流れで演奏されたのが、アルバムRIDE ON TIME収録のSILENT SCREAMER。
ああこの曲好きだったな、なんで好きだったんだっけ、RIDE ON TIME最初に聴いたからだっけ。っていうか俺これ聴いたことあったんだったかな、前のツアーでやってたんだっけ(やってた)。
……とか考えてたらそのままメドレーで次の曲が始まった。山下達郎の出世曲の1つ、BOMBER。
思い出した。
SILENT SCREAMER~BOMBER~SILENT SCREAMERのメドレー。
最初に山下達郎を意識した違法アップロード音源。
たぶん今でもまだどこかにアップロードされてるだろう、と思ったらやっぱりビリビリにあった。
たしか高校生の頃にこれを聴いた。YouTubeすらなかった時代かもしれない。2chかどこかの気がするけどそれも思い出せない。元がブートレッグなのかサンソンで流された録音なのかもわからない。ただネットで「山下達郎は昔のこういう曲が凄いんだ」みたいな書き込みと共に確かにこのメドレーを聴いた。それで最初に山下達郎を意識したんだ。へーこんなかっこいい音楽やってたんだと。
いや、でもまさかこれが生で聴けるとは……。信じられない……。SILENT SCREAMERもBOMBERも単曲ではたぶんそのうち聴けたと思うけどこれが……。
BOMBERからSILENT SCREAMERに戻ったあとのカッティングギターのソロも知ってる。ホイッスル(ホイッスル!)の音も知ってる。本人による完全再現というか完コピ。信じられない……何度も言うけど本当に信じられない……。というかネットに強い人なんだし絶対この音源意識してる気がする。
その後も定番のLET’S DANCE BABY、これも時代を合わせたCIRCUS TOWN、アンコール挟んで定番の長尺RIDE ON TIME、その後も全然休ませてくれない恋のブギウギトレインの連奏。これが本当に70歳のライブかよ。20代のパンクロックバンドでもこんなんそうそうやらないよ。齢なのに凄いとかもうそういう言葉で語れる次元じゃない。
本当に楽しかった。心に積もった澱がだいぶ流れた気がする。
音楽とかコンサートって本当にいいなぁと思ったし、当たり前になりすぎて省みることもなかったけどこういう趣味を持ってて良かった。