2001年頃のインターネットとか

2023年6月20日

web.archive.org/web/20010503000556/http://sophy.asaka.toyo.ac.jp/users/mikami/info&media/NetCommunity&CulturalChange.html

インターネットコミュニティの発展と文化変容

2001年1月13日(土) Version 1.0

はじめに

この論文ノートは、2001年4月にNTT出版から刊行される予定の『カルチュラル・エコロジー-情報革命の光と影-』(カルチュラル・エコロジー研究委員会編)の第4章「インターネットコミュニティの発展と文化変容」のために私が書き下ろした論文の一部を、草稿の段階でインターネット上で公開するものです。草稿段階ですので、完成原稿はこれと若干異なったものになります。また、論文のあくまでも一部ですから、全体像はこれとは異なったものとなります。

別のことを探してたらたまたま見つかった2001年当時のインターネットコミュニティの分析記事。大学の社会学者の先生が書いたもの。いい感じに常時接続が普及し始めた時代のネットコミュニティの記録になってると思う。

ネットコミュニティを「交流・コミュニケーション型」「討論・ディベート型」「支援・動員型」「ファンクラブ型」「仮想ゲーム型」「協同・コラボレーション型」「商取引・マーケット型」の7つに分類してそれぞれにコメントがつけられているんだけどかなり肌感覚にも合う。いまだにこんなホームページ作ってるので感慨深い。

興味を惹かれるのはこの2001年の時点で既に「ファンクラブ型」のコミュニティが最も勢いがあると書かれていること。

現在、インターネット・コミュニティの中でもっとも活況を呈しているのは、「ファンクラブ型」のコミュニティだといっても過言ではないだろう。有名プロサッカー選手、アイドル歌手、女子テレビアナウンサー、売れっ子作家など各界の有名人やタレントの公式ホームページや、応援するファンの作った非公式ホームページには、必ずといっていいほど、掲示板(BBS)、チャットルームなどのコミュニティウェアがついており、タレントとファン、ファン同士の出会いと交流、情報交換をはかる場となっている。また、人気アニメ、ビデオゲームなどのファンがつくるインターネット・コミュニティは、子供達の間で人気の的になっている。こうしたファンクラブ型のインターネット・コミュニティは、現実世界にあるファンクラブとは違って、だれでも気軽にアクセスし、参加できるという意味で、よりオープンなコミュニティであり、かつ掲示板やチャットルームなどを通じて、匿名の個人同士でより自由なコミュニケーションをはかることができるというメリットを持っている。また、深夜であろうと、あるいは海外からであろうと、時間的、空間的な制約を感じることなく参加できるバーチャルコミュニティである。こうしたファンクラブ型のインターネット・コミュニティは、とくに若者や子供達の人間関係にもさまざまな影響を与えている。

掲示板とチャットの存在が強調されているように、サイトの動的な部分がCGIスクリプトくらいしかなかった頃でも、結局のところ民衆のネット文化の本流は広義のコミュニケーションにあった。
そしてこの部分が徐々に肥大化し、静的な作りのサイトを離れ、Web2.0みたいな概念が唱えられるようになる。そしてこの流れが現代のSNSへ繋がっていくので、個人サイトの衰退は必然的だった。
……っていうのが個人的なインターネット史観。

ちなみにこの次の節で言及されているカービィくらぶというサイトを運営していたワタチーという方はJRAのオタク騎手として有名だった小島太一さんとされている。かなり大きいサイトだったらしい。

たとえば、カルチュラル・エコロジー委員会のメディア倫理研究部会が行った調査の中には、「ワタチー」というハンドルネームを持つ中学2年生の少年が主催する「カービィくらぶ」(http://tai.honesta.net/kabi/)と呼ばれるインターネット上のテレビゲームファンサークルがあった。この「カービィくらぶ」はいっさい大人が関与しておらず、小学生や中学生たちが特定のゲームソフトの情報交換のために参加していた。とくに、掲示板やチャットコーナーでは20~30人程度の常連が毎日のようにコミュニケーションを行っており、その内容はゲームソフトの話題から学校や友人関係を含む多様なものであったという(箕浦、坂本,2000)。 実際に、このホームページを覗いてみると、ゲームソフトに関する基本的な情報はもちろん、小説、イラスト、掲示板、チャットルーム、メーリングソフトなど、インタラクティブな機能をフルに活用した多彩なオンライン・コミュニティがつくられており、まさに情報とコミュニケーションの広場という雰囲気だ。これを子供だけでつくり、運営しているというのは、まさに驚嘆に値する。しかも、次の坂本の指摘にあるように、このネットワークコミュニティにおいて、掲示板あらし屋などが訪問するとこれを徹底的に説得して、秩序を回復、維持するなど、ネットワーク上で創発的に情報倫理が形成され、実践されており、メディアエコロジーの模範的事例を提供している