ずっと真夜中でいいのに。『沈香学』

活動5周年、3枚目のフルアルバム。

ずとまよにはシングルCDという概念が存在せず、既発曲はすべて配信リリース、13曲中11曲がYouTubeでのアニメーションMV付き(楽曲とMVの制作スケジュールどうなってるんだろう…)という現代的なポップスの究極形みたいな売り方してるんだけど、なんだかんだアルバムってフォーマットは強力でそれなりのテーマとか統一性とかスタイルの変化みたいなのはかなり見えやすいかな。

個人的にも2ndアルバム以降の最近の曲の方が好きだったんだけど、アルバム用に新しく書き下ろされた2曲「花一匁」「馴れ合いサーブ」できっちり答え合わせになった感じがする。ざっくり言ったら(これ言うと批評的には0点だけど)、椎名林檎フォロワーっぽさがさらに強くなった。今回はアレンジの厚みが増してるのでむしろ事変かもしれない。

相変わらずの病み系のダウナーな暗さが主軸で、ぶちゃけずとまよの引き出しって基本的にこれ1つしかないんだけど、それに加えて今回の明確な変化として踊れる曲ばっかりになった。
たぶんこれはフロントマンのACAねの資質や志向よりも5年活動してるうちに見えてきた方向性だと思うんだけど(初期曲はボカロ直系の早口の歌い方や複雑な展開が多いし)、この暗くて踊れる感じは結構今の時代の空気っぽくてかなり好き。
アートワークやMVは最近のニューレトロやネオレトロのトレンドを意識しつつ音楽の方はオシャレレトロなシティポップ志向とは微妙にズレがあって、このあたりのマニアックさを捨てないあたりがずとまよの好きな部分かもしれない。