aiko『君の隣』、あるいはaikoとライブとファン

ここ5年くらいずっと二次元オタク系のアイドルコンテンツを追っかけててさすがに残ったものや学んだことってのはたしかにあって、その1つがアイドルとファンとの関係性みたいなところ。純粋に作品としての楽曲だけでは見えない部分。たぶんこれは普通に音楽聴いてただけだったらまず気にしてなかった。

さて、一昨年から去年にかけて大物のサブスク解禁が相次いだ影響で昔聴いてたアーティスト聴き返してたんですが、その中で気にかかったのがaikoでした。

最近は菊地成孔がaikoを評価したラジオの書き起こしがバズった(リンク)ことでサブカル勢にもリスナーが増えた感があるけど、aikoの本質はやっぱりポップミュージックだと思う。大衆性を引き受ける覚悟があるステージで歌っている人。最近まで知らなかったんですがスヌーザーの田中宗一郎さんもaikoの評価非常に高いみたいだね。

で、音源聴き返して最近の曲調べているうちに特に興味を引いたのが、ライブだった。

最初に観たのがこれ。一昨年のデビュー20周年記念で行われた野外ライブ。最初の印象は何より圧倒的なかっこよさ。めちゃくちゃかっこいい。もう40くらいのはずなのに若い。そして花道が大きすぎる。最近は音源揃えるより前にライブDVD買う(これも声優界隈で得た学びです)ようになってきたのですぐこのBlu-ray買いました。

で、ライブ見たり過去のインタビュー見たりしてるうちにさらに関心を惹かれたのが、aikoの自身のファンに対する並々ならぬ熱意の強さ。「ファンを大事にする」と字面だけ見ればシンプルで当たり前に見えるけど、それにしたって何かが違う。何かが一線を画している。

ちなみに今年の初め、コロナでツアーが中止になるぎりぎりのタイミングで幸運にも見れたライブで何より印象に残ったのがaikoとファンとの距離の近さだった。会場の雰囲気が~とかではなく物理的に近い。ファンサとかそういうレベルではない。

まずZeppなのに上のライブ映像みたいなめっちゃ長い花道作っている。本当に物理的にものすごく近くまで来るし、ハイタッチもスキンシップもガンガンやる。奥のほうや2階席への気配りも忘れない。

そしてMCと言えるようなMCが少ない。事実上ほぼ雑談。めちゃくちゃ客に話しかけるし、なんなら客のほうからaikoに話しかけてる。しかも一言二言受け答えするだけではなく、ちゃんとどこから来た?とか隣にいるの彼女?とか丁寧に会話するし弄る。

一番衝撃だったのが、客席から(勝手に)振られた「今日は2020年2月22日でaikoの曲名で一番多く使われる数字も2」という謎のトリビアを拾ってすぐアカペラで『二時頃』を歌い出してそのままバンドが合わせてワンコーラス歌いきったところ。バンドもおかしいよ。

このあたりのスタンス突っ込んで書かれてるものないかな~と思ってずっと調べてたんですが、最近これを見つけました。

この君の隣という曲はaiko自身がファンのことを想って書いたと明言している曲。

このインタビューでは「ファンに依存している」「別れたくない彼氏をつなぎ止める」気持ちでライブをやっている等、aiko節の本領発揮といった感じのフレーズが出てくる。

aikoというアーティストの沼はここにあると思う。上に書いてあるファンへの向き合い方に彼氏を引き合いに出してくるの、私はこれは言葉のあやみたいなものではないと思う。aiko先生はそのままの意味でお前らとの関係は恋愛と同じだと言っているのである。

これは強引に聞こえるかもしれない。だが事あるごとに口に出す「一対一で届ける」という言葉、そして徹底的に「私とあなた」で描かれる歌詞。ここから導き出される答えは1つではあるまいか。

aikoの活動を追い始めて事あるごとに感じるのは「誰かのために」歌っているという強い意識です。アーティスト然とした「自分勝手にやるからわかってもらえる人にだけわかってもらえばそれでいい」的なところが少ないと言えばいいかもしれない。献身的というか他者本位的というか。

これは逆にしても通じる。周知の通りaikoの曲はその100パーセントが恋愛ソングですが、そこには恋愛のモチーフを通した人生の種々の情感が表されている。『君の隣』にしてもそうだし、映画版聲の形に書き下ろされた『恋をしたのは』は記憶に新しいでしょう。

そしてファンに依存しているとまで言い切るにふさわしく、身体1つでマスイメージを引き受ける強さも感じる。

そういうところに、これ以上ない格好良さを感じる。