SPITZ JAMBOREE TOUR 2019-2020 “MIKKE” 2019/12/12 横浜アリーナ

SPITZ JAMBOREE TOUR 2019-2020 “MIKKE” 2019/12/12 横浜アリーナ

スピッツはずっと特別なバンドで、あんまり思い入れが強かったので逆になかなかライブ行く決心がつかないバンドでもありました。

高校生の頃から今に至るまでほぼ人生のパートナーのような聴き方をしていたので、ここまで自分の生き方に引き寄せて聴いてるとさすがにちょっと現実のスピッツからは乖離していっているというのが大きかった。音楽って特に世界の中で自分ひとりのためだけに歌ってくれているような感覚を起こさせますよね。
リアルタイムで追っかけられていた時でもさざなみCDやとげまるのあたりはそんなに熱心に聴き込んでなくて、隼の頃のライブ行けてた人いいな~とかばっかり考えてました(僕が聴き始めた高校生の頃はスーベニアが最新作でした)。

他のアーティストなら普通にいいライブ観れれば十分なんだけど、スピッツに関しては一分の隙もなくイメージ壊したくないレベルの存在だったので生で見たいという欲求が起こることがほぼなかった。ライブバンドなことくらい当然知ってたしDVDも買ってたんだけど。その結果およそ15年もの歳月が過ぎていたのだ……。

今回ライブ行くことにした理由は色々といくつかあるんですが、大きいところで「そろそろ解も再結成もせずコンスタントにずっと活動してくれてるアーティストほど大事に考えんといかんな」という気持ちが強くなってきたのがありました。ちなみに今年はaikoも取りました。
もう1つは最近のリリースがだんだん好きな傾向になってきたこと。小さな生き物あたりからサウンドや歌詞がすごくスッと入ってくるようになってきた。これは作ってる側の変化なのか自分の変化なのかわからないけど、たぶん両方なんでしょう。ようやく自分の中のスピッツのイメージと現在進行形で活動してるスピッツが重なってきた。

そういう流れでチケ取るかと決心したのが秋頃、このクラスの知名度のアーティストのチケ取りノウハウ何もなかったのでプレイガイド先行に申し込みまくって取れたのが横浜アリーナ初日。個人的にアリーナのスタンド席って見やすくて好きなので大変助かりました。

さて、ライブですが本当に良かった。良かったというかなんだろう、人生のライフイベントか何かみたいな感じに近い。
正直なところ結成30周年ツアーをスルーした時は、あーこれスピッツ観る唯一のタイミング逃したなと思ってたけど、やはり運命ってあるんだなと思った。ここしかなかった。今回のツアーのこの日しかなかった。

セトリ

1. 見っけ
2. はぐれ狼
3. エスカルゴ
4. けもの道
5. 小さな生き物
(MC)
6. 遥か
7. 快速
8. 放浪カモメはどこまでも
9. 点と点
10. ラジオデイズ
(MC)
11. 優しいあの子
12. ヒビスクス
13. プール
14. まがった僕のしっぽ
(MC)
15. 青い車
16. YM71D
17. ロビンソン
18. ありがとさん
19. 楓
(MC)
20. 渚
21. 8823
22. 俺のすべて
23. ヒバリのこころ
En
24. 醒めない
(メンバー紹介・MC)
25. チェリー
26. ヤマブキ

先に純粋に音楽的なとこ書いとくと、パフォーマンスは本当に素晴らしかったです。

関ジャムで「スピッツはボーカルとギターが支え役でベースとドラムが前に出て主張しているバンド」という見解を聞いたときに感心したんですが、ライブ中に意識をベースとドラムに移すと、たしかに今まで経験したことのないくらい音にうねりや跳ねがあるのを感じてなるほどなとなった。
生で見たリーダーは本当に動きの主張も激しかったど。横浜アリーナの広い広いステージに左右に張り出す花道までつけておいて、ボーカルはほぼ不動のままベーシストがめちゃくちゃ動き回ってスタンド近くまで行くのが本当に良かった。

ボーカリストとしての草野マサムネも素晴らしかった。
生で聴くとこんなに歌に力強さがある人なんだって思った。たぶんこの日は声の調子もかなりいい日だったと思う。ほぼCD音源のままで変な癖つけないのが余計に凄さを感じさせるタイプだった。アンコールのチェリーは感動と圧倒がないまぜになった最高のアクトだった。
ステージングもアリーナにふさわしいスケールの照明や演出で感動的。最高。ロックバンドのアリーナ公演って他にないハレ感あるのが好き。

で、上のセトリです。
まずそもそもリリースツアーなのに最新作から3つ干されてるんだよな。結果ほとんどオールタイムベストかつ、タイアップ曲みたいなコマーシャリズムからも少し外れた絶妙な選曲。30周年ツアーより絶対こっちの方が良かったよ。
近年のセットリストは調べてたので定番曲はだいたいわかってたけど、それにしても刺さる曲が多かった。どちらかというと演奏や歌のパフォーマンスを楽しみにしていたので、選曲でこんなに刺されるなんて想像もしてなかった。

一番聴いていた三日月ロックから3曲、特に序盤でエスカルゴと遥かが演奏された時は今日のピーク決まってしまった…と思ってたけど甘すぎた。一番ライブ見たかった時期だった隼から放浪カモメ、テン年代で特に小さな生き物と醒めないからタイトル曲2つ、そしてイントロ流れてからあーこれ何の曲だっけ…と理解まで相当な時間かかったプール。

そして何よりも青い車と渚。自分が生きててこの曲をライブで聴けるなんて思わなかった。
見っけみたいなバンド自体の歴史を感じさせるアルバムのリリースツアーで青い車みたいな自分が大切に聴いてきた曲が選曲されていることがすごく嬉しかった。
渚もまさかこの曲を生で聴ける日が来るなんて思ってなくてひたすら感動してた。いや実は結構演奏されてるのかもしれないけど、リリースツアーで初めてスピッツ見に来て渚聴けるなんて思わないよ普通。
たしか渚はMCで自分たちの年齢とかバンドが30周年迎えたこととか90年代からのお客さんは足腰に気をつけて~みたいなMCの後で演奏されていて、自分が聴いてきたスピッツも今のスピッツも確かに地続きでずっと繋がってるんだなという静かな感動があった。
マサムネも歌詞世界も90年代からさすがにずいぶん変わってきていて、それが現在進行系のスピッツとの距離感が生まれてしまった大きな理由でもあったので、この2曲が聴けたのは本当に嬉しかった。

過去の曲のことばっかり書いたけど当然新曲も良かった。見っけはロックの衝動的な方に振ったアルバムと話していたけど、そういう若々しさが全面に溢れてるライブだったと思う。このセトリで新曲がぜんぜん浮いてないのほんとにすごいと思う。とにかく飽きる時間がなかった。
ただそれ以上に感じるものがあったのはバンドの歴史それ自体の重みみたいなところ。前にスピッツは全員50越えたらどんな音楽性になるんだろうって考えたんだけど、まさか開幕ギタージャーンでもっと若々しくなってるなんて思わないよ。
実際ちゃんと見たらみんな顔にシワ増えてるし冷静に普通に年相応だったりもするんだけど(地デジ画質に耐えられないからMステでカメラに映されないように配慮してもらってたんだと思うってネタにしてた)、でもサウンドも詩作世界も目の輝きも20代の青年にしか思えない。
このあたりをすごく感じたのがラストブロックの8823~俺のすべて(この流れ映像で何度も見すぎて初見の気がしなかった)と本編ラストのヒバリのこころ(ヒバリのこころ!)、そしてアンコールで醒めないと続いてヤマブキで締める流れ。
節目の30周年を越えて、醒めないみたいなメルクマール的アルバムを作って、それでもまだ飽きもせず老け込みもせず大御所感も出さず、40周年も50周年も今と変わらないまま走り続けてくれる、そういう絶対的な信頼が感じられました。

自分ももうずいぶんいい歳になったけど、ビックリするくらいいまだに全然好奇心衰えないし、そういうところでも50代のスピッツを見ていてすごくシンパシーと安心感を感じられました。もう歳取るのもあんまり怖くないよ。
定番の挨拶なんだけろうけど、マサムネが最後に「今日は『今日も』じゃなくて『今日は』と言いたいくらい楽しかった」と言ってくれたの本当に嬉しかったな。15年かけてようやく同時代に生きてるスピッツと伴走できるようになったかな。今日まで歌い続けてくれて本当にありがとう。これからもよろしくお願いします。