90年代の怪盤・安達祐実『Viva!America』がサブスクで配信されています

90年代の怪盤・安達祐実『Viva!America』がサブスクで配信されています

(※2020/11/14追記)Spotifyでは配信停止されたみたいですね……。
(※2021/03/11追記)また配信再開したみたいですね……。

かつてのインターネット、2000年代前半頃に個人音楽レビューサイトという文化がありました。当然今でも個人で音楽レビューやってる人などいくらでもいるんですが、それでもやはり個人サイトというのはブログ以後とか違った雰囲気があったような気がします。

今となっては当時のみんながどうやって辿り着いていたのはまったく謎ですが、Twitterで一定にタイプの人間はなぜかみんなサイト名を知っているのである種の共通体験なんだと思います。

その中でも特に存在感があったと思われるサイトの1つが『J-POP CRAZY」(現在閉鎖済み)。まさしく古き良きテキストサイトという趣きがあり、非常に読ませる文章を書かれるところでした。

J-POP CRAZY 跡地(Internet Archive)

そして、このサイトのレビューされていた作品で私が特に印象に残っているのが、この記事の本題である安達祐実『Viva!America』というアルバムです。以下引用

  祝・安達祐実結婚!(棒読みで)というわけで、幼くして同情するなら金をよこせ、と某むねおばりにど迫力の 恫喝を繰り出し、ぼくらバブル世代のメモリーにトラウマとして永遠に刻み込まれることになった脅威の子役であるところの 彼女が結婚ということで、時の移ろいと無常を実感せずにはいられません。しかも流行のできちゃった婚ということはつまり ・・・・・・FUCK!ということで、結婚を祝い、そんな彼女が できるだけ封印したいであろう、歌手としての作品をレビューしちゃうぞ(全然祝ってない)。 

  さて、彼女がアムラー全盛期の96年にリリースした本作「Viva!AMERICA」。 タイトルからしてやっちまった臭漂いますが、実は当時中学3年生にして3rdアルバムです。恐るべし。 誰が買っていたんだ。ジャケットやブックレット内の安達祐実の容姿が、ほとんど現在と変わらないことに戦慄しつつ クレジットに目をやると、元ピチカートの高浪敬太郎に大槻ケンヂ、 広瀬香美、西脇唯にプリプリ中山加奈子、かの香織、朝本浩文、カーネーションの直枝政太郎&矢部浩志、 更には嘉門達夫にムッシュかまやつ、そしてサニーデイサービス全員など、ほぼ統一感のない豪華メンバーが並び、 いかに当時の彼女が巨大な権力を握っていたかが窺えます。白いものも安達祐実が黒だといえば黒という時代でしたからね(嘘)。 

  さて肝心の中身ですが、 基本路線はユルい古きよきアメリカンポップロックという感じで悪くない。 ほとんどの曲が生音主体のバンドアレンジで、夏向きの良質ポップアルバムといった趣きの仕上がり。 やっつけでなく、ちゃんと作ってある感じで、いかに当時の彼女が巨大な権力(略)しかし、主役であるところの安達さんのボーカルが、なんというか、 非常にこう、全編通してデモリッショナルなのだった。まるで天から注ぐ裁きの光のごとく、大人達が設えたバックトラックを 全て破壊。ドラマでは感情揺さぶる迫真の演技を披露していた安達さんですが、歌はどうしてこんなに棒読みなんでしょうか!? 

  というわけで、曲ごとのコメントは不可。壮大な管弦をバックに安達さんが棒読みで歌い上げたかと思ったら突如 マシンガントークが挿入される「サクセス」のようなサプライズな珍曲もあるが、 この曲のギターがどうとか、アレンジがどうとかメロディがどうとか 語る余地を安達さんボーカルが全く与えない。そんな常に主役を主張するナチュラルボーン・アクトレス安達祐実の 存在感をひしひしと感じるほかないアルバムなのだった。 しかし、「ホームタウン」で3人揃ってバッキングを勤めているサニーデイの3人はどういう経緯で参加したんだろ・・・。 (記・05.10.1)

https://web.archive.org/web/20070129023842fw_/http://www.h6.dion.ne.jp:80/~jpop/music/other1.html

この凄まじい作曲陣を揃えているにも関わらずこの評価です。私は当時ブックオフ特価品コーナーで確保しましたがほんとうに衝撃を受けました。

さて、そんなアルバムが現在Spotify・Apple Music等のストリーミング配信で聴くことができます。AmazonのPrime Musicにもあったのでプライム会員に入ってる人も聴けます。私はこれを発見したとき、ストリーミングサービス最大の功績とまで思いました。

曲目とクレジット

内容の方は前記の素晴らしいレビューで言い尽くされているので、もう終わってもいいかと思いましたが、せっかくなのでクレジットと個人的な雑感だけ書き残しておきます。

1. Introduction~The Star-Spangled Banner

作詞:Francis Scott Key 作曲:John Staffored Smith 編曲:白井良明

ムーンライダーズのギタリスト・白井良明のアレンジによるアメリカ国歌のカバー。
衝撃的な棒読みでアルバムの幕が上がる。

2. ちょっと来ちゃったアメリカよ!

作詞:大槻ケンヂ 作曲・編曲 朝本浩文

オーケンが30分で書き上げたような歌詞と名プロデューサー朝本浩文による良質のポップス(歌はひどい)。

そもそもなぜこのアルバムのコンセプトがアメリカなのか私はいまだによくわかっていません。この記事書くためにクレジット見直したらギターとドラムがThe Collectorsでした。

3. VANILLAのリップ

作詞:能地裕子 作曲:直枝政太郎 編曲:菊地成孔

カーネーション直枝政太郎と当時第1期SPANK HAPPYをやっていた菊地成孔によるアルバムの白眉。2年に1回くらいは聴きます。
ギター、キーボード、そして菊地成孔によるサックスのアンサンブルが素晴らしい。90年代屈指のオケだと思います。しかし棒読みの歌ですべてが上書きされてます。
あとこれもこの記事書いてて気が付きましたがこのアルバム音が良いです。

4. 魔法を信じるかい?

作詞・作曲 広瀬香美 編曲:本間昭光

一部ではパブリックイメージに反しマニアックな曲を作ることで知られる広瀬香美と、ポルノグラフィティを手がける前の本間昭光によるスローテンポな佳曲。当然歌はひどい。
通しで聴いてるとこのあたりで歌の下手さがキツくなって一時停止する。

5. 空に手をかざしたら

作詞:西脇唯 作曲:三木拓次 編曲:外間隆史・冨田恵一

全体的に作曲陣の意味がよくわからないこのアルバムの中でも特によくわからない布陣です。そのせいか曲としてはコンポーザーの個性がどれも出ていない気がします。歌はだめです。

6. Interlude –success–

ストリーミング配信だとこの曲カットされてる?ようですが安達祐実さんの歌唱指導をやっている時の録音みたいな音声が流れます。

7. サクセス

作詞:嘉門達夫 作曲・編曲:本間勇輔

私はこの曲を聴くまで嘉門達夫が歌詞の提供をやっていたことを知りませんでした。インタールードを挟んでアッパーな曲調ですが、相変わらず歌が棒読みなのでアルバムの流れには特に影響ありません。
作曲の本間勇輔さんは存じ上げておりませんでしたがこのアルバムのクレジットの方々Google日本語入力で打ち込んでるとほぼ全員が変換サジェストされて凄いと思いました。

8. さよならコスモス

作詞:中山加奈子 作曲・編曲 朝本浩文

作詞にプリンセス・プリンセスの中山加奈子。ギターの刻むリズムが心地よい佳曲です。しかしここに来るまでに果てしなく疲れるのであまり聴くことがありません。

9. 雨の日も嵐の日もハリケーンの日も

作詞・作曲:かの香織 編曲:高浪敬太郎

作詞・作曲はかの香織、編曲はこのアルバムが出た2年前にピチカート・ファイヴを脱退した高浪敬太郎。

10. 恋のマラソン・ボーイ

作詞:Nick Heyward 日本語詞:能地裕子 作曲:Nick Heyward 編曲:河野伸

Nick Heywardは知りませんでしたが、調べたらHaircut 100のフロントマンでした。本当にどういう人脈なんだ。編曲は第1期SPANK HAPPYのキーボーディスト河野伸。ドラムはカーネーションの矢部浩志。

11. ホームタウン

作詞:能地裕子 作曲:かまやつひろし 編曲:サニーデイ・サービス

やっと終わったよ、みたいな気持ちになるアコースティックなクロージング曲。上記のレビューにある通り演奏がサニーデイ・サービス全員です。

そういう感じでざざっと書かせて頂きました。興味の持たれた方は是非人生の43分を消費してほしい。とても43分とは思えないほどの疲労度を感じます。