具島直子と葛谷葉子に関する覚書き:90-00年代邦楽シーンが産み落としたAOR/R&Bの結晶

具島直子さんのこと

具島直子の名前をまた見かけたのは、たしか2年くらい前くらいだった。
年下の大学生くらいの子が最近聴いていると書いていたので、かなり驚いたのを覚えている。ほとんど忘れられた存在だと思っていた。

検索するとtofubeatsが褒めていたりと最近のシティポップブームで再評価されたよう。アナログまで出てた。生きてるといろんなことがある。

とはいえ、例によって僕もまたリアルタイムで聴いていたじゃない。
知ったのはインターネットで音楽を探すことに夢中になっていた高校生の頃、2006年くらい。
その当時で既に知る人ぞ知る存在だった。何らかのジャンルやシーンに属していたわけではなく、かつ活動をほぼ休止していたのでそりゃそうだろう。音楽性が近いアーティストを強引に挙げれば畠山美由紀や古内東子あたりになるけど、そもそも畠山美由紀や古内東子でピンと来る人自体が少ない。

そしてまた、音楽性がかなり地味な部類に入る。カテゴリー的にはメロウなAOR。
商業的には文句なしにヒットしそうにない。ヒットしそうな要素が一切ない。
しかし、曲はどれも文句なしに素晴らしい。僕の青春の音楽であり、その後も今に至るまでずっと聴き続けている1人に入る。

具島さんの音楽性は何よりもそのウォーミングさと親密さ。
どの曲も暖炉が焚かれている部屋にいるように湿っぽい暖かさがあり、室内楽のような親密さに満ちている。
単なるアコースティックミュージックとは一線を画する非常に独特の暖かさがあって、これが具島直子の諸作にマイナーでありながらずっと忘れ去られないサインを記している。
声も特徴的で、ウィスパーっぽくもありながら芯があり、大人っぽいようでどこかキュートさも感じる。

そして、音が良い。とにかく地味な音楽なんだけど、代わりにずっと後世まで古びない生楽器特有のサウンド。プロデューサーは一貫して桐ヶ谷ボビーという方が手掛けていて、たぶんこの人の仕事がかなり大きい。90年代特有の潤沢な予算も感じる。

2008年にはプチ復活してインディーズでアルバムをリリースしていた(アルバムクレジットでは変名になってるけどこれも桐ヶ谷ボビープロデュース)。当時は制約からかあんまり評判芳しくなかった気がするけど今聴くとそう悪くない気がする。
たしかこのときボビー氏がYouTubeにライブ動画もアップしてたんだけどさすがにもう……って検索したらまだあった……。

ライブでも歌安定しててすごいですね。

メジャーでは3枚のアルバムをリリースしてるんだけど、サブスクだと3rd『mellow medicine』のみレコード会社が違って未解禁。代わりに一昨年出たベストで何曲か聴ける。

公式サイトがあり現在もちゃんと動いてるのでまた何か動きがあればいいな。

具島直子公式ホームページ

葛谷葉子さんのこと

具島直子とよく並べて語られるのが葛谷葉子。

プロデュースは巨匠・松尾潔。
たしかボビー氏と交流のあった松尾氏が具島直子を見て関心を持ち、自分でも女性シンガーソングライターのプロデュースをという経緯から発掘された、という人だったはず(ネット上にほぼソースが残ってない)。
具島直子にはCandyという曲の松尾潔リミックスバージョンがあり、葛谷葉子は1stアルバムの恋という曲のクレジットに桐ケ谷ボビーと具島直子の演奏陣の名前が刻まれている。

葛谷さんの作品はとにかく曲が粒揃い。「TRUE LIES」、「All Night」、「Natural」、「夢も見ないまま」、「サイドシート」、「my book」、「Shinin’ Day」、どれも初聴で惚れ込んだし、何度聴いたかわからない。この先もずっと聴き続けると思う。

R&Bブーム絶頂期の松尾潔の仕事だからそりゃいいのは当然としても、たぶん本人のソングライティング力もかなりの人だったんだと思う。2枚のアルバムをリリースし事実上活動を休止した後は裏方でCHEMISTRYを始め数々のミュージシャンに曲提供もした。

この人の声も特徴的で、微妙にハスキーっぽさが入った唯一無二な感じがとても好き。この声も代替になる人がいない感じでそこもずっと好きな理由の1つかもしれない。

葛谷さんも2007年頃にプチ復活して小田急ロマンスカーのCMタイアップ曲というのをリリースしてた。その後は裏方のお仕事でも名前を見かけなかったのでもう音楽は引退しちゃったのかなと思ってた。

さて、そんなところに葛谷葉子さんの新曲が出ています。

今日、Spotifyの新着情報をタップしたら「葛谷葉子」の名前があった。

何かの間違いじゃないかと思った。いや、未解禁だった曲が卸されただけだろ、と。ロマンスカーの曲もなかったし。

が、間違いなく新曲だった。公式サイトも公式インスタもできてた。なんかMVまで作ってた。

葛谷葉子 Official Website

声もメロディラインも葛谷葉子なのが嬉しい。本当に嬉しい。

「活動再開」とはっきり表明している。このアートワーク見るにやっぱり最近のシティポップブームで刺激あったのかな。

このお二人は僕の音楽人生の中でもだいぶ重要な位置を占めている人なので一度ちゃんと書いときたかったんだけど、まさかこんな形で書くことになるなんて思わなかった。

生きてるといろんなことが起こる。本当にそう思う。

(※)

葛谷葉子のニュー・ベストアルバム『MIDNIGHT DRIVIN’-KUZUYA YOKO MUSIC GREETINGS 1999~2021-』2021年9月22日発売!|otonano by Sony Music Direct (Japan) Inc.

ソニーが関わってて公式はここ?かな?
見覚えがある…すごく…高橋徹也とか朝日美穂とかで……